人間は楽をするものですね | 間違いだらけのテニス指導 <初級(初心者)・中級から上級テニスを目指すために>

人間は楽をするものですね

 家から駅までの経路。途中、明らかに私有地であり通ってはいけない所があるが、そこを通ると大幅に時間節約できる。多くの人はそこを通る。やがて「通行禁止」の看板が立つがそれでもまだ通る。完全に通行できなくしないと通る人は無くならない。スクールの練習からこんなことを連想したわけです。

 スクールの練習は上手くなるためにやるのだと思います。これは一般論であり、他の理由もあると思いますが、とりあえず「上手くなるため」としておきます。最初は何もできないのでコーチの言う事をしっかり聞きながら各種習得していくことでしょう。この最初の段階で何かが習得できるとその後の継続になりますが、そうでないと「テニスは合わない」となるのでしょう。特にストロークがなんとか続けられるようになることは継続のための必須だと思います。サービスやボレーがいくらできても、ストロークができないと他者とラリーができず面白くないからです。

 ストロークができるようになってから、そこから人によって得意が分岐、異なってくるというのが一般的だと思います。「フォアが得意」「バックが得意」「スマッシュが得意」などから始まって、「バックのクロスが得意」とか「ボレーのロブが得意」など得意の分野が詳細になっていったりすることでしょう。

 さて、人間は前述の近道の話ではないのですが「楽」をするようにできていると思います。まあそれは単なる怠慢ということだけではなく、安全の確保、安定の確保でもあったりするでしょう。ですから「楽」がいけないことだとは思いません。が、テニスの向上のためにはこのへん自分自身に厳しくなっていかなければならないのでは、ということなのです。

 例えばボレーボレーの練習。コーチがよく生徒同士でやらせておくやつです。ボレーの基礎の習得方法にも問題があったのかもしれません。ともかくネットにつめるのです。正確にはつめてしまうのです。恐らくボレーは来たボールに面を当てる、というインプットばかりが多く、運ぶとか上げるというインプットが不足しているのだと思います。ネットにつめれば相手のボールが上にこようが下に来ようがとりあえずボールにあてることができ、それを相手コートにかえすことができます。だからネットにつめます。しかし、こうした時、頭を超えるボールには全く対応できません。そして、いつまでたってもローボレーは習得できません。実践では(実際の試合では)ロブあり、ローボレーありですが、どちらにも対応できません。結果として「ボレー苦手」「ストローク好き」みたいになっていくのでしょう。

 やれることをきっちりやるのはいいのです。が、やれないことはやれるようにしないといつまでたっても進歩しないのは明白です。やれるようにするためには、やらないとなりません。やるには失敗はつきものです。失敗しながら、やりながら、やれるようになるのです。これは、楽でもないし、安定でもありません。

 ストロークのコントロール力に比較するとボレーが杜撰(ずさん)な人は少なくありません。スクール等でいかにボレーが適当に教えられているかを現しているとも思います。一般人にはすることの多いダブルスにおいて、チャンスをつくったり、チャンスを決めたりすることがほとんどできていないといっていいのではないでしょうか。

 得意なことをするのは大いにけっこう。しかし、テニスが守備から攻撃まで5段階あるとすれば、その得意なことはそのどこかの段階にあてはまるのであって、他の段階でも使えるオールマイティなものではないでしょう。他の段階で必要最小限の技術は身につけるべきなのです。ネットから1メートルしか離れていないロブをスマッシュが苦手だからとボレーで返すのはいくらボレーが得意だからといっても問題なのです。「そんなことわかっているよ」と人は切り返して言い返してくるでしょう。しかし、よーく考えてみると見えてきます。如何に自分が楽をして取り組まなければならない課題や問題から目を背けているかがです。

 進歩するためには遠回りをすること。楽をしないよう自覚すること。テニスに限ったことではないでしょう。